その1
登場人物
ヨーゼフ山田・・・地球を征服する為に、日本に使わされた。12人のドロイド兵を持つ。日本語堪能。
クララ柿本・・・ヨーゼフ山田の秘書。厚化粧の為40代には見えない。
ドロイド兵・・・人型万能兵器。人の意識を操作する怪電波を出すため、普段人には見えない(認知されない)。しかし物理的にはそこにいる為、TVカメラには映る。
鉛色の曇り空はどんよりと、朝を暗くしていた。所々時間を狂わせたように街灯が付いている。
今、ヨーゼフ山田は新宿はとあるビルの28階エレベーターホールから外を眺めている。ビル街が形作る地上と空の境界線の少し上に点滅するライトが見えるあれはスカイツリー。
「見ろクララ」
上から下まで全くストレートに装飾の無い鼠色のコートのポケットから出された手は濃い灰色の革手袋をしていた。そっと伸ばされた指は1°の狂いも無く一人の男を指さしている。
彼は、紳士服の青山で買ったような地味なコートを着、クランチバックを脇に抱え肩をすぼめて大股で歩いていた。上から見ていると時々コートの裾から黒いビジネスシューズが見える。
「厳しい顔をして歩いている。行く先は本意ではないようだな。
やつは誰に命令されて、これからどこへ行くのだ。
それは誰の意思だ。誰の望みを実現しようとしているのだ。
その意思を実現されるのはどのような仕組みだ。
そして彼はなぜあんなに厳しく、苦しい顔をしているのだ」
クララ柿本は、言葉の意図を探るようにヨーゼフの顔を見た。そして次の言葉を待った。
「一号にやつの後をつけさせろ」とヨーゼフは言った。
新宿のデッキにある冷たいベンチには、今の時間誰も座っていない。
しかし、次の瞬間、いかにも顔を隠すように新聞を広げて読んでいる若者がそこにいた。新聞の影からそっと辺りを見回す彼の顔はまだ若く、高校生のようだ。
彼は、一人の人が目の前を通り過ぎた事を確認し、そっと立ち上がり尾行を始めた。
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